お得感と原価
お客様ごとに変わる判断基準
お得感とは宿泊費用に関係する項目ですが、他の宿より値段が安いかどうかという相対的な比較から得られるお得感と、お客様一人一人がお持ちになられている独自の金銭感覚を基に得られるお得感があります。
前者の場合、他の宿と比較しないと得られないお得感ですが、破格の値段でもない限り、数百円の値段の差のみから得られるお得感は少ないでしょう。
後者の場合、他の宿と同じ価格帯の値段設定であれば、お客様は独自の物差しでお得かどうかを評価されるわけです。
同じ値段でも、その値段を安いと思われお得に感じるお客様もいらっしゃれば、高いと思われるお客様もいらっしゃいます。
お客様の物差しは年齢や収入など様々な要因で変化していきます。
例えば別業界の話ですが、居酒屋の料理の相場です。今では刺身盛り合わせ1000円と言われて(実物の味と量にもよりますが)妥当な値段だと思いますが、20歳の頃の私は300円で食べれる牛丼の値段しか比較基準がなく、1000円の刺身盛り合わせは高いと思っていました。
それが580円の刺身盛り合わせでも同様に当時の自分なら高いと感じたはずです。
このように、お客様一人一人によって受け取られ方が変わってしまう値段だけの工夫では、お得感の評価を上げることは厳しいと言えます。
お客様が考える宿の原価のイメージ
よく原価がいくらだから、安い高いという話を聞きますが、宿業の場合だと単純な仕入れ値としては基本的にはレンタルするシーツ代が原価になるのではないでしょうか。
もし清掃作業を外注しているのであれば清掃費用もかかるかもしれませんが、光熱費などの建物の維持費や清掃作業の人件費を原価として認識していただけるお客様はそうそういらっしゃられないと思います。
ですが、宿のサービスの主な目的は寝泊まりできる部屋場所を貸し出すことなのですから、建物及び部屋を準備するための建築費用については、原価の一部としてお客様は認識されています。
飲食店であれば料理を提供してお金をもらうのが主な目的なので原価のイメージは食材の材料費になります。
食事を提供する場所を準備することも必要不可欠ではありますが、それが主な目的ではないので原価のイメージには含まれません。
場所代としてお金をもらうレンタルオフィスのような業種であれば、場所を準備するためにかかる費用をお客様も原価としてイメージしやすいと思います。
宿業の場合、建物の規模が大きくなればなるほど、お客様は原価のイメージができなくなります。
巨大な建物の宿に宿泊するとそれだけで高級なイメージがするのはそのためです。有名ホテルの名前だけで高級なイメージを受けるのも同様だと思います。
お客様にお得感を感じてもらい、良い評価をいただくためには、値段を意識するより、原価がイメージし難い空間作りの方が効果があるのです。
□ 宿業の業界人以外は、宿の正確な原価は分かりづらいもの
□ 宿の規模が大きくなればなるほど、高級なイメージを感じてもらえる
□ 値段より原価のイメージがし難い空間の方がお得感を感じてもらえる